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天気痛・気象痛

天候の変化によって起きる頭痛のメカニズム

片頭痛と天気

天気と片頭痛の関係については、個人差がありますが、一般的に気温や気圧が急激に変化すると、片頭痛持ちの方の症状が悪くなることがあります。
低気圧や前線の通過、気圧の急激な下降、また上昇によっても引き起こされます。
具体的には雨や雪の日や、雨の降る前の曇りの日、台風が発生したときなどです。
天気の崩れが内耳のセンサーを介して交感神経を興奮させることが関係していると言われています。

片頭痛のメカニズムにはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が関与

片頭痛のメカニズムはまだはっきりと確定していません。
しかし、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)という物質の血中濃度が片頭痛を起こしている最中に高くなることや、この物質を片頭痛の患者さんに投与すると片頭痛が誘発されることがわかり、片頭痛はCGRPが関与して痛みを起こしていることが明らかになりました。
三叉神経に発現しているため、これを治療のターゲットとしたCGRP関連薬剤(抗CGRP抗体、抗CGRP受容体抗体、CGRP受容体拮抗薬)が開発され、注射治療薬として用いられています。

片頭痛の治療

天気痛の方にも片頭痛の予防の注射は保険適応

天気の変化による片頭痛を予防することはできないのでしょうか?
片頭痛に対する予防の注射、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)関連薬剤が2021年から日本でも保険適応となっています。
天気の変化で悪くなる片頭痛も、使用基準を満たせば、もちろん保険適応で治療することができます。

痛みを和らげる治療-急性期治療

片頭痛治療は大きく分けて急性期に痛みを和らげる急性期治療と片頭痛をできるだけ起こさないようにする予防治療に分けられます。
今までの片頭痛治療は、痛くなり始めたら飲むトリプタン製剤が中心でした。
薬の飲み遅れで効かなかったり、トリプタン製剤そのものの効果が弱い方など、まだまだ頭痛に振り回される生活でした。

片頭痛の治療

  薬による治療 セルフケア
急性期治療
(片頭痛発作時に痛みを和らげる)
  • トリプタン製剤
  • NSAIDs
  • アセトアミノフェン
  • ジタン系薬剤など
  • 安静にする
  • 頭を冷やす
  • 部屋の照明を暗くするなど
予防治療
(片頭痛をできるだけ起こさないようにする)
  • CGRP関連薬剤 (エムガルティ®など)
  • カルシウム拮抗薬
  • β遮断薬
  • 抗てんかん薬
  • 漢方薬など
寝不足、寝過ぎ、ストレス、空腹、光や音刺激、特定の食べ物を避けるなど
  • NSAIDs(エヌセイズ):非ステロイド系抗炎症薬
  • CGRP(シージーアールピー):カルシトニン遺伝子関連ペプチド

痛くならないようにする治療-予防治療

長い間、片頭痛の予防薬はカルシウム拮抗薬、β遮断薬、抗てんかん薬など、他の疾患に使われる内服薬を片頭痛の予防薬として代用していました。
しかし、2021年から片頭痛予防の注射として、CGRP関連製剤の3剤が使用できるようになりました。
CGRPそのものにくっつき、CGRPを無力化する抗CGRP抗体(商品名エムガルティ、アジョビ)と、CGRPのくっつく相手である受容体をふさいでしまい作用しないようにする抗CGRP受容体抗体(商品名アイモビーク)です。
3剤の特徴は表の通りです。エムガルティは初回2本で、やや立ち上がりが早いと言われています。
また、アジョビは 12週間に1回 3本まとめて投与という使い方ができるので、忙しく外来に頻繁に通うのが難しい方にはおすすめしております。
それぞれオートインジェクターにより自己注射ができますので、ご希望の方は在宅自己注射も可能です。外来でご相談ください。

CGRP関連薬剤 3剤の特徴
商品名 エムガルティ アジョビ アイモビーグ
作用機序 CGRP抗体 CGRP抗体 CGRP受容体抗体
国内発売日 2021年4月 2021年8月 2021年8月
用法 皮下注射
初回2本
その後1か月間隔1本ずつ
皮下注射
4週間隔1本ずつ
または
12週間隔3本ずつ
皮下注
射4週間隔1本ずつ
薬剤液量 1本1ml 1本1.5ml 1本1ml
CGRP関連製剤の使用基準

CGRP関連製剤の使用基準ですが、以下の厚生労働省の最適使用推進ガイドラインを満たす必要があります。

  • 片頭痛の発作が月に複数回以上で出ていることを医師が確認していること。
  • 片頭痛が過去 3ヶ月以上にわたり、平均して1ヶ月に4回以上起きている。
  • 従来の片頭痛予防薬の効果は不十分、または副作用により継続が困難である。
  • 生活面の改善や片頭痛発作の治療をすでに行なっているが、それでも日常生活に支障がある。

注意点としては、CGRP関連製剤には効果に個人差があることや、いずれも保険適応ですが、新薬なので高額な治療であることが挙げられます。
現在、保険適応 3割負担で1本が1万2千円台から 1万3千円台となっています(詳細は受診時にご確認ください。)
今後は薬価改定により少しずつ下がっていくことが予測されます。
また、医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、付加給付制度がある健康保険の方は超えた分が還元されます。
妊娠中や授乳中の女性、18歳未満の方については基本的には投与はできません。

頭痛の性状や、回数、状況に応じて、期間限定で使用することもできますので(3ヶ月以上は継続することが推奨されます)ご相談ください。
また、軽度の天気頭痛・気象痛の場合には、漢方薬などの内服による予防が効くこともあります。外来で頭痛の頻度や程度によりご相談いたします。

天気で悪くなる片頭痛と予防の注射

気圧変化などで片頭痛が起こるタイプの方は、一年の中でも片頭痛が悪くなる時と、それほど起こらない時期があるかもしれません。
例えば、梅雨の時期や、1月から2月にかけての雪をもたらす低気圧などは片頭痛が悪くなると訴えて外来にいらっしゃる方も多いです。
ご自身の頭痛がどの季節にどんな気候で悪くなるかを把握しておくと、片頭痛予防の注射をその時期にあわせて少し前から使用開始することが可能です。

天気で悪くなる頭痛と高気圧酸素ルーム

天気痛・気象痛は内耳のセンサーを介して、自律神経が乱れることが関係しています。
気圧の大きな変化が原因となる頭痛の患者様にとって、気圧の調整が可能な酸素カプセルは自律神経の機能を回復させ、脳の血管の膨張を元に戻すことで、頭痛の予防や改善に役立ちます。
また、高圧気圧酸素カプセル内で体を圧迫することにより、疲労回復、アンチエイジング、怪我の治癒促進効果も期待できます。

たくさんある酸素カプセルの中でも、しっかりと気圧を上げて安定して維持することができる機種を選定し、日本臨床高気圧酸素・潜水医学会専門医・評議員を務めております院長が、安全に目的に合わせた圧調整を行います。
酸素カプセルは医療機器ではなく健康器具です。健康保険は適応なく、自費診療です(詳細はこちら)。
高気圧酸素ルームは、耳ぬきのできない方、中耳炎になりやすい方は、耳の痛みや中耳炎を悪化させる可能性がありますので、使用することができません。当クリニックでは事前に耳鼻科検査にて高気圧酸素ルームに入ることが可能かどうか診断を行います。(耳鼻科検査は高気圧酸素ルームの初回の料金に含まれます。)
天候の変化で具合の悪くなるお子様も安心してお入りいただけます。

患者さまによって目指すゴールは様々

天気痛・気象痛の急性期治療と予防治療は同時進行です。
頭痛の痛みを取りながら予防内服や注射薬で予防を進め、最終的には予防により「頭痛に振り回されない生活」を目指していきます。
頭痛外来ではその方の頭痛の性質や生活の背景により、それぞれのゴールを設定して、CGRP関連製剤とその他の治療を使い分けていきます。

天気痛・気象痛のうち特に片頭痛は放置せず治療を

最後に、片頭痛はもともと脳の過興奮・感受性が高まっている状態です。
片頭痛に対して長年、適切な治療をせず、放置すると加齢に伴い片頭痛自体は軽快しても、難治性の浮動性めまい、頭痛、頭重感、耳鳴りなどを発症することがあります。
また、片頭痛は脳梗塞や、アルツハイマー病などの認知症のリスクとなるというデータも出てきています。
頭痛外来での治療をお勧めします。

文責 片桐彰久 Katagiri Akihisa M.D.,Ph.D
脳神経外科専門医・指導医

日本頭痛学会・脳卒中学会・脳血管内治療学会・日本臨床高気圧酸素学会など 多くの学会の専門医・指導医を持つ。
妻と息子が片頭痛持ちであったことから頭痛診療を学び、板橋中央総合病院で頭痛外来を開設。片頭痛予防の抗CGRP製剤は区西北部医療圏で1番の使用経験を持つ。2023年に3つの診療科が協力して頭痛診療をするお茶の水頭痛めまいクリニックを開設。

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