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アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎の有病率

アレルギー性鼻炎の患者さんは、グラフのように最近は急増しています。
大きな原因はスギ花粉症患者の増加です。
さらに幹線道路付近で交通量の多い場所に住む人の方が、交通量の少ない郊外に住む人より、花粉症を発症する確率が高いことが報告されています。
特にディーゼル排気ガスと花粉がくっつくことで、症状を増悪させると考えられています。
スギ花粉症は全年齢層では30%と高い有病率ですが、中でも35歳から64歳の中年層では35%~40%と高率です。

世界の中でも日本の花粉症は重症

世界の3大花粉症は、イギリスのイネ科の花粉症、米国のブタクサ花粉症、そして日本のスギ花粉症です。
その中で日本の花粉症は一番症状が重いと言われています。

アレルギー性鼻炎の症状と診断

くしゃみ、透明な鼻水、特徴的な粘膜の発赤や浮腫状態などの所見、眼のかゆみの合併、鼻水の好酸球検査から診断します。
血液検査RAST(ラスト,radioallergosorbent test)で、ある特異的なアレルゲンに反応する血液中の免疫グロブリンE(IgEアイジーイー)という物質を個別に調べることで、原因物質を診断することもできます。
一般的にはハウスダストや数種類の花粉、動物の上皮など可能性の高いものを選択して調べていましたが、最近は1回の検査で36~48項目など多数の項目の特異的IgEを全て調べられる検査もあります。
検査結果は、それぞれのアレルゲンに対するIgE抗体の量を『陰性』『陽性1~6』までの7段階に分類します。
3割負担の保険診療で4000円程度です。

アレルギー性鼻炎の原因と発症時期

スギは2~4月、ヒノキは4~5月、カモガヤ、オオアワガエリなどのイネ科は6~10月、ブタクサ、ヨモギなどのキク科は8~10月です。ハウスダストやダニ、ネコやイヌの皮膚は一年中症状が出ます。
赤坂虎の門クリニックでアレルギー性鼻炎の方の血液のIgE検査結果をまとめたものを示します。
圧倒的にスギ花粉が陽性の方が多く、次いで、ダニ、ハウスダスト、ヒノキ、オオアワガエリ、カモガヤの順です。
さらに、抗体価が4以上の方はスギ花粉症で多く認められ、やはりスギ花粉症が重症になることがわかります。

アレルギー性鼻炎の治療

アレルギー性鼻炎の内服・点鼻療法

アレルギー性鼻炎の主な治療方法は先ず投薬です。投薬には、飲み薬タイプと鼻腔(びくう)にスプレーするタイプがあります。
最近では、1日1回の投薬で、しかも眠くならないタイプの薬剤が良く処方されています。
ただし、スギ花粉症で言えば初期にはそれでも良いのですが、花粉が増えてくると、鼻づまりが悪化することが多く、追加の別なタイプの薬や鼻のスプレーを必要とする場合もあります。

アレルギー性鼻炎の予防治療

アレルギー性鼻炎の舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)

舌下免疫療法で予防することができるのは、スギの花粉やダニがアレルゲンになっているアレルギーです。
舌下免疫療法は、舌の下にスギ花粉やダニから取った抽出物の錠剤を入れて溶かして吸収させ、だんだんと体を慣らしていく方法です。
以下の2種類の薬があります。

① シダキュア

スギ花粉を原料としたエキスを含む薬剤であり、これを少量から投与し、維持量まで徐々に増やしていき、体を慣らしていくことで、スギ花粉症の諸症状を改善する薬です。
投与開始後1週間は、シダキュア スギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、シダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAUを1日1回1錠、舌下に1分間とどめておいた後、飲み込みます。
その後5分間は、うがいや飲食を控えることが必要です。

主な副作用として、口の粘膜の腫れ、 耳や口の中のそう痒症 、のどの不快感 、口内炎 などがあります。
これらは抗アレルギー剤の併用、あるいはシダキュアの減量で副作用を軽減できますので、その場合は医師にご相談ください。
虫歯や口内炎、口内のヤケドがある場合は、治るまで内服を停止してください。
まれにアナフィラキシー 、 血圧低下 、 呼吸困難 、 全身が赤くなる 、 顔面がはれる 、

シダキュアの効果

これまで投与した方の80~90%が改善したと報告されています。
最低でも3年間は毎日内服を継続する必要がありますが、1年目くらいから効果が現れ始めます。
3年間継続して内服された方では、内服を止めても症状改善が持続しますが、一部の方では、再度の内服開始が必要となる場合もあります。

② ミティキュア

ダニを原料としたエキスを含む薬剤であり、これを少量から投与し、維持量まで徐々に増やしていき、体を慣らしていくことで、ダニアレルギーの諸症状を改善する薬です。
投与開始後1週間は、ミティキュアダニ舌下錠3,300JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、ミティキュアダニ舌下錠10,000JAUを1日1回1錠、舌下に1分間とどめておいた後、飲み込みます。
その後5分間は、うがいや飲食を控えます。

主な副作用としてはシダキュアと同用のものがありますが、これらは抗アレルギー剤の併用、あるいはミティキュアの減量で副作用を軽減できますので、その場合は医師にご相談ください。
まれにアナフィラキシー 、 血圧低下 、 呼吸困難 、 全身が赤くなる、 顔面がむくむ 、 息苦しくなる、 喘息の悪化を来す場合があり、この場合は、直ちに内服を中止してください。

軽症の副作用の頻度は、ミティキュアで60~70%とシダキュアよりも多く、投与開始1カ月以内に認められ、1カ月経過すると、頻度・程度は軽減してきます。

喘息を合併するダニアレルギーの方の割合は30~40%とスギ花粉症でよりも多く、まれにミティキュアにより一時的に喘息の悪化を来す場合がありますので、シダキュアよりもやや注意が必要です。
副作用の頻度・程度を軽減するため、抗ヒスタミン剤を舌下投与開始1週間前から、投与開始後1ヶ月まで、内服継続していただく場合もあります。

ミティキュアの効果

3~5年間は毎日内服を継続する必要がありますが、開始して2~3ヶ月で効果が現れ始めます。
継続して内服された方では、内服を止めても症状改善が持続しますが、一部の方では、再度の内服開始が必要となる場合もあります。

ゾレア®注射

ゾレア®はアレルギー反応を引き起こす細胞がアレルゲンと結びつく働きを弱める効果があります。
季節性アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症)のうち、従来の治療で効果が十分にみられなかった重症または最重症の「スギ花粉症」の方に限って、2020年より保険適応になっていますが、12歳以上でないと適用できません。

アレルギー性鼻炎の手術療法

レーザーによる下甲介粘膜焼灼術が一般的です。こちらは局所麻酔で可能であり、約30分で終了します。
最近増えているのは後鼻神経切断手術+粘膜下下鼻甲介骨切除術です。
こちらは、原則的に全身麻酔で行われますので、入院が必要となることもあります。
保険適応されますが、かなり高額となります。

最近増えてきた秋花粉によるアレルギー性鼻炎

春はスギ、ヒノキ花粉が主ですが、秋はキク科のブタクサやヨモギが飛散します。
秋花粉症の特徴は、眼症状と鼻症状に加えて、のどのかゆみがスギ花粉症よりも強いことです。
どうしてでしょうか?その差は花粉の大きさです。
秋花粉では花粉の大きさが春花粉よりも小さいので、のどの奥まで入りやすく、付着しやすいのです。

地球温暖化のために、秋の草木の繁殖力が強くなり、全国で飛散する可能性が増えています。
春先だけでなく、秋にも、よりフィルターの細かいマスク装用が必要になる可能性があります。

文責 熊川孝三 Kumakawa Kozo M.D.,Ph.D.
耳鼻咽喉科専門医・指導医

日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医
昭和大学医学部耳鼻咽喉科客員教授
日本演奏芸術医学研究会理事

虎の門病院耳鼻咽喉科にて人工内耳・耳硬化症をはじめとする数多くの手術を施行。
また日本初の聴性脳幹インプラントに成功。
虎の門病院耳鼻咽喉科部長・聴覚センター長を退任後、現在、赤坂虎の門クリニック耳鼻科部長。
2023年3つの診療科が協力して頭痛診療をするお茶の水頭痛めまいクリニック顧問に就任。

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