メニュー

緊張型頭痛

緊張型頭痛は最も多い一次性頭痛

脳そのものに疾患があったり、他の疾患が原因となって起こる二次頭痛と異なり、頭痛そのものが病気である頭痛を一次性頭痛と呼びます。
一時性頭痛の代表は「片頭痛」、「緊張型頭痛」、「群発頭痛」です。このうち最も頻度が多いと言われているのが「緊張型頭痛」です。

緊張型頭痛の有病率

緊張型頭痛は日本で何人くらいいるの?(日本における緊張型頭痛の有病率)

日本における緊張型頭痛の有病率について、いくつかの研究が行われています。
緊張型頭痛は一次性頭痛の中でも多く、15歳以上を対象として全国調査では、有病率が22.4%というデータがあります。女性の方が男性よりも多いと言われていますが、片頭痛ほどの差はありません。ただし、緊張型頭痛の症状が、他の頭痛と重複することもあるため、診断の確実性にも課題があります。片頭痛のようにわかりやすい特徴がなく、わからない点が最も多い頭痛と言われています。

世界の緊張型頭痛の有病率

世界人口での緊張型頭痛の有病率は38%で、成人に限ると42%というデータが出ています。しかし、片頭痛と比べて、調査の数自体が少なくなっています。また、緊張型頭痛の診断や基準が、国や地域によって異なることがあるため、正確な有病率の把握は難しいとされています。

緊張型頭痛のメカニズム

緊張型頭痛のメカニズムはいまだ不明

緊張型頭痛の発症機序に関して、いまだに不明であり、一次性頭痛の中で研究が進んでいない疾患の1つです。現在考えられているメカニズムの1つ目は、首や肩、ひたいやあごの筋肉の緊張により、神経の痛みの感覚が過敏になり、頭痛が発生する末梢性疼痛メカニズムです。また、筋肉や筋膜からの刺激が長い間、持続することにより、脳や脊髄の神経回路の機能が変化し、痛みの感覚が増強されてしまうことがあり、これを中枢性疼痛メカニズムといいます。慢性化してしまう緊張型頭痛には、この2番目の中枢性疼痛メカニズムが関係していると考えられています。

緊張型頭痛の特徴と悪くしてしまう原因

緊張型頭痛はどのような特徴のある頭痛?

緊張型頭痛の特徴として

  • 頭全体に鈍痛や圧迫感がある
  • 頭頂部や側頭部、目の上や首などに締め付けられるような痛みがある
  • 頭痛は軽度から中くらいで、吐き気は伴わない
  • 時間と共に悪くなり、夕方にかけてひどくなる
  • 首や肩の筋肉が固くなる、肩こりがある

 ただし、片頭痛の予兆としても肩こりの症状が出ますので、肩こりがあるから緊張型頭痛とは限りません。受診をして診断を受けることをお勧めします。

  • 頭痛の持続時間は30分から数日程度であり、慢性的に続くこともある
  • 片頭痛のように動作により悪くなることはない、体を動かして良くなることもある
  • 頭痛は温めたり、入浴により改善することがある(片頭痛では温めると悪くなる)
  • まぶしい(光過敏)、大きな音がうるさく感じる(音過敏)が出る場合もある
  • 緊張型頭痛がひどくなると、後頭神経痛という神経の痛みを合併することがある

などが挙げられます。

緊張型頭痛は何で悪くなる頭痛?(緊張型頭痛の誘発因子・増悪因子)

一般的にストレスや筋肉の緊張などの身体的・精神的な原因によって引き起こされることが多いと言われています。

  • ストレスや精神的緊張:ストレスが緊張型頭痛の原因となることが多いとされています。
  • 不規則な睡眠:睡眠不足や過剰な睡眠は緊張型頭痛の原因となることがあります。
  • 食事の乱れ:食事の時間や栄養バランスの乱れが原因となることがあります。
  • 姿勢の悪さ:長時間同じ姿勢をとることが、緊張型頭痛を引き起こすことがあります。
  • 目の疲れ:長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用が原因となることがあります。
  • 運動不足:運動不足は筋肉の硬直や血流の悪化を招きます。
  • 喫煙
  • 天候の変化:気温や気圧の大きな変化が緊張型頭痛の原因となることがあります。

ただし、これらが全て緊張型頭痛を引き起こす訳ではなく、個人差があります。頭痛ダイアリーでご自身の体調やライフスタイルを理解できるようにしましょう。

緊張型頭痛の分類と診断について

緊張型頭痛の発症頻度による分類

緊張型頭痛は、頭痛の頻度によって3つに分けられます。

  1. 3ヶ月を超えて、平均して1ヶ月に1日未満の頻度
  2. 3ヶ月を超えて、平均して1ヶ月に1日以上15日未満の頻度(頻発反復性緊張型頭痛)
  3. 1ヶ月に15日以上の頻度(慢性緊張性頭痛)

緊張型頭痛の頻度が①の1ヶ月に1日未満の場合は、ごくたまに起きる頭痛ですので、市販の鎮痛薬で様子を見ていて大丈夫です。しかし、②の頻発反復性緊張型頭痛で、鎮痛薬を飲む頻度が週に2回を超えてくるようならば、一度頭痛外来でしっかり原因を調べ、また、市販の鎮痛薬を常用する前に止められるように対策をした方が良いと言えるでしょう。③の慢性緊張性頭痛はかなり深刻な状況です。慢性緊張型片頭痛の多くは、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)の状態になっています。この場合、必ず専門医に相談しましょう。

緊張型頭痛の診断基準

診断基準には上に書きました頻度による分類のほかに、以下の項目があります。

  • 頭痛は30分〜7日間持続する
  • 頭痛は以下の特徴の少なくとも2つを満たす
    1. 両側性
    2. 圧迫される感じまたはしめつける感じ(ドキドキと拍動しない)
    3. 強さは軽いか中等度
    4. 歩行や階段の上り下りなどの動作により悪くならない
  • 以下の両方を満たす
    1. 気持ち悪くなる、または嘔吐はない
    2. 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ

詳しい診断は頭痛外来でご相談ください。

緊張型頭痛の治療について

緊張型頭痛はどのくらいの程度で治療が必要になる?

1ヶ月に1回程度のまれに起こる緊張型頭痛はその際だけ市販の鎮痛薬を飲んだり、ライフスタイルを改善することで受診の必要はありません。頭痛により日常生活に支障をきたす場合や、週2日以上市販の痛み止めを飲んでしまう場合、痛みがひどくなってきている場合は頭痛外来を受診してください。

はじめのうちには市販の鎮痛薬でも一時的には痛みが治るため、頭痛外来を受診なさらないまま我慢している方もいらっしゃいますが、中には市販薬を常用しているうちに知らず知らずのうちに「薬剤の使用過多による頭痛」と呼ばれる病気を併発していることもあります。自己判断で鎮痛薬の量が増える前に早めに受診をしましょう。

痛みを和らげる治療➖急性期治療

緊張型頭痛もまた痛みを和らげる急性期治療と、頭痛を予防する予防治療に分かれます。

急性期ではアセトアミノフェン(商品名カロナール)やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を中心にした治療を行います。頭痛の診療ガイドライン2021では以下の薬剤が推奨されています。

  • アセトアミノフェン(商品名カロナール)
  • アスピリン・ダイアルミネート配合(商品名バファリン)
  • メフェナム酸(商品名ポンタール)
  • ロキソプロフェん(商品名ロキソニン)
  • インドメタシン ファルネシル(商品名インフリー)
  • ジクロフェナク(商品名ボルタレン)
  • イブプロフェン(商品名ブルフェン)
  • ナプロキセン(商品名ナイキサン)

市販の鎮痛薬でよくみられるカフェインを配合したものは、上記の薬に比べると推奨度は低くなります。カフェイン配合の複合鎮痛薬はなかなかやめられなくなることがあり(依存性)注意が必要です。
鎮痛薬を1週間で2〜3日使用している症例は「薬物使用過多による頭痛」になってしまう可能性があるため、頭痛外来での治療が必要です。

緊張型頭痛を起こさないようにする治療➖予防治療

予防薬としては、抗うつ薬のアミノトリプチンが最もよく使われ、効果を発揮します。少量から開始し、副作用の口のかわきや眠気に注意する必要があります。副作用が多い場合には他の種類の抗うつ薬を検討します。予防治療は6〜12ヶ月ごとに再評価し、予防内服を続けるか中止するかを検討します。

緊張型頭痛の予防➖非薬物療法

頭痛ガイドラインで効果があるとされているのは、精神療法を呼び行動療法です。
これに比べると鍼治療は確実性は低いとされています。
頭痛体操は緊張型頭痛に広く薦められており、ご自身ですぐに取り組むことができる予防法です。

患者さんによって目指すゴールは様々

急性期治療と予防治療は同時進行です。頭痛の痛みを取りながら予防内服や行動療法を進めます。しかし、個々の患者さんにより頭痛の性状や患者さんの背景、求めるゴールは様々です。お一人お一人と相談して目指すゴールを決めながら、少しでも痛みのない生活を送るお手伝いをいたします。

 

文責 片桐彰久 Katagiri Akihisa M.D.,Ph.D
脳神経外科専門医・指導医

日本頭痛学会・脳卒中学会・脳血管内治療学会・日本臨床高気圧酸素学会など 多くの学会の専門医・指導医を持つ。
妻と息子が片頭痛持ちであったことから頭痛診療を学び、板橋中央総合病院で頭痛外来を開設。片頭痛予防の抗CGRP製剤は区西北部医療圏で1番の使用経験を持つ。2023年に3つの診療科が協力して頭痛診療をするお茶の水頭痛めまいクリニックを開設。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME