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緑内障

緑内障は視神経が痛んでしまう病気

緑内障(glaucoma)は、目の病気の一つで、眼球内の圧力により視神経が損傷を受けることで、だんだんと、ものが見える範囲が狭くなる病気を指します。
実は、緑内障は日本人における失明の原因の第1位で、失明原因の28.6%を占めています。
「白内障」と「緑内障」を混同されている方もいらっしゃいますが、「白内障」は年齢を重ねることによって誰しもがなる可能性が大きい病気、「緑内障」は早期発見・早期治療が必要な病気です。

緑内障の症状

緑内障は初期段階では症状が全くないことがほとんどです。
40歳を過ぎたら定期的に眼底検査を受けることが推奨されています。
そして、緑内障は進行すると以下のような症状が現れることがあります:

  1. 視野欠損: 緑内障の初期段階では、視野の一部が欠けたように見えることがあります。これは、視神経が損傷を受けているため、視野の一部が失われることによるものです。ただし、両目の視野が重なる部分や瞼があるために、一部の視野がかけているだけでは気づかないことが多く、眼科で視野検査を行うことで、初めて気づく方がほとんどです。
  2. 視力の低下: 視野の欠損が進行していくうちに、徐々に視力が低下していくことがあります。
  3. 目の痛みや赤み、頭痛: 「閉塞隅角緑内障」と呼ばれる一部の緑内障は、急激な眼圧の上昇によって目の痛みや白眼の充血、頭痛を引き起こすことがあります。
  4. 光のまぶしさに敏感になる: 緑内障の進行によって、光に対する感受性が増すことがあります。

緑内障は初期には自覚症状がないことがほとんどで、症状の程度や感じ方も人それぞれ違います。
緑内障は知らず知らずに進行する疾患であるため、早期発見と適切な治療が重要になります。

緑内障の分類

緑内障にはいくつかの分類方法がありますが、主な分類は以下の通りです。

  1. 1開放隅角緑内障
    開放隅角緑内障の中には、「原発開放隅角緑内障」と「正常眼圧緑内障」があります。
  2. 閉塞隅角緑内障
  3. 続発緑内障

原発開放隅角緑内障

隅角というのは、角膜(目の表面でコンタクトレンズをつける部分)と虹彩(日本人だとやや茶色い部分)の間の外からは見えない部分で、そこに目の中の水(房水)を排泄する経路があります。
角膜と虹彩の間のスペース(隅角)自体は広くあいているにも関わらずその経路が目詰まりして房水が排泄されにくくなっている状態が「原発開放隅角緑内障」です。
開放隅角緑内障は房水を排泄する経路の目詰まりで長い間かけて眼圧が徐々に上昇し、それに伴い視野障害が起こるので、自覚症状がありません。

正常眼圧緑内障

開放隅角緑内障のうち、眼圧自体は正常範囲(9~21mmHg)でも、視神経が耐えられる眼圧が元々低いために視野障害が起こる「正常眼圧緑内障」も開放隅角緑内障の仲間です。
日本人の緑内障のうち6割ほどが正常眼圧緑内障であり、この場合、正常範囲の眼圧をさらに下げる必要があります。

閉塞隅角隅角緑内障

角膜と虹彩の間の隅角のスペース自体が狭くなって房水が排泄されにくくなっている状態が「閉塞隅角緑内障」です。
ある時突然、隅角が急激に閉塞して眼圧が急に上がり、目の痛みや充血、頭痛や吐き気が起きる「急性緑内障発作」という状態になることもあり、この状態は片頭痛や群発頭痛と間違いやすいともいわれます。
急性緑内障発作は眼圧が大変あがっている状態ですので、瞼を閉じて指で眼球を触ると、充血して痛い方の眼球がパンパンに硬くなっていることがわかります。
視神経は一度ダメージを受けると元には戻りませんので、眼圧を急いで下げることが必要になります。

閉塞隅角緑内障では、以下の薬剤の使用により、房水の流出が抑制されてしまい、眼圧が上昇してしまう可能性があり、使用が禁忌(使用してはいけない)とされています。

  • 睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬
  • 抗パーキンソン薬
  • 鎮痛剤
  • 総合感冒薬
  • 抗ヒスタミン剤
  • お腹の鎮痛薬
  • 排尿障害治療薬
  • 麻酔前投薬
  • 散瞳薬 など

頭痛の治療に用いられる、抗不安薬や抗てんかん薬も閉塞隅角緑内障では使用が禁忌となります。
閉塞隅角の可能性があるかどうかは眼科の診察によりわかります。
特にご高齢の方(白内障により水晶体が厚くなり隅角が狭くなる)や遠視の方(眼球自体が小さめである可能性があり、隅角が狭い可能性がある)で閉塞隅角が疑わしい場合には、これらの薬剤を使用する前に脳神経外科から眼科受診を勧めさせていただく場合があります。

続発緑内障

ぶどう膜炎や偽落屑症候群、ステロイドといった薬剤の使用、目の外傷などにより眼圧が上昇し、視神経が障害されることによる緑内障です。
ステロイドの使用により眼圧が上がる体質の方は、眼科以外の診療科で処方される内服ステロイドや花粉症の時期に商法されるステロイド点眼、市販の塗り薬に含まれるステロイドにも反応して眼圧が上昇することがありますので、注意が必要です。

緑内障の診断

緑内障は自覚症状がないことが多く、視野がおかしいと気づいた時には進行していることが大変多いです。
そのため、40歳を過ぎたら健康診断などで眼底検査を受ける必要があります。
健康診断の結果で「緑内障の疑い」のほか、「視神経乳頭陥凹拡大(または疑い)」「神経線維層欠損(またはその疑い)」などの記載がありましたら眼科を受診し、次のような検査を受けることが必要になります。
網膜の神経繊維が集まって、網膜の1箇所から視神経となり脳に出ていくところが視神経乳頭です。
視神経乳頭には凹みがあり、緑内障では、この視神経乳頭陥凹が大きくなります。

眼圧検査

眼圧の正常範囲は9~21mmHgです。この値を超えると高眼圧と診断され、緑内障のリスクとなります。

細隙灯顕微鏡検査

眼底検査により直接視神経乳頭を観察したり、続発緑内障になるような他の病気がないか診察します。

隅角鏡検査

目の表面に麻酔の点眼をつけ、隅角鏡という特殊なレンズにゼリーをつけて目に接着させて隅角と呼ばれる目の中の房水を排泄する部分を診察します。

光干渉断層計(OCT)

近赤外線を利用して、網膜の断面像を撮影します。短時間で検査することができ、網膜の神経の厚みを測定できます。
視神経の障害の状況が詳しくわかります。

視野検査

視野の欠損状態を調べます。

緑内障の頻度と危険因子

緑内障はどのくらいの頻度?(日本における緑内障の有病率)

日本人では40歳以上の人口の約5%が緑内障であると言われています。推定患者数は約500万人と言われています。
無症状の病気ですので、今まで眼科の病気になったことのない方も、健診で眼底チェックをしたり、眼科を受診することをお勧めします。

緑内障の危険因子

緑内障の危険因子として、以下のものが挙げられます。

  • 40歳以上
  • 人種(アフリカ系、アジア系、ヒスパニック系)
  • 眼圧の値が高い
  • 緑内障の家族歴
  • 視神経乳頭陥凹拡大
  • 視神経乳頭出血
  • 角膜の厚さが薄い
  • 血圧が低い
  • 片頭痛
  • 貧血 など

頭痛と開放隅角緑内障

片頭痛のある患者さんでは開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む)になるリスクが1.68倍というデータがあります。
また、片頭痛患者さんには、原発開放隅角緑内障よりも、正常眼圧緑内障が多いというデータもあります。
40歳以上で片頭痛があり、まだ緑内障の検査をしたことがない方は眼科の受診をご検討ください。

緑内障の治療

緑内障の治療は、眼圧を下げることで、視野障害の進行を止めることです。
点眼治療と手術治療に大別されます。

緑内障の点眼治療

緑内障治療薬は眼圧を下げる薬剤で、視神経の障害を止める目的として処方されます。
房水の流出を促進させるプロスタグランジン、房水の生産を抑制するβ遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬などを使用します。
通常は1剤から治療を開始し、十分な効果が得られない場合は、薬剤の変更や追加を行います。

ただし、緑内障治療の点眼を開始後、約一年間で40%もの患者さんが治療から脱落するというデータがあります。
その原因として、緑内障の初期は自覚症状がないため、治療の必要性がわかりにくいこと、毎日の点眼や点眼薬の副作用という負担の割に、自身で治療効果(眼圧の低下)を実感できないことが挙げられます。

緑内障の点眼治療の副作用にはプロスタグランジンで白目の充血やプロスタグランジン関連眼周囲症(PAP)があげられます。
プロスタグランジン関連眼周囲症は眼瞼下垂(まぶたが落ちてくる)や上瞼の落ちくぼみ、目の周囲の色素沈着などが見られるため、特に若い方や女性では使いにくいという欠点があります。
また、β遮断薬は気管支を収縮させるため、喘息のある方では使用できません。

緑内障のレーザー治療・手術治療

点眼治療による眼圧の下降具合や視野検査の視野障害の進行の程度に応じて、レーザー治療や手術加療が行われます。
レーザー治療は、レーザーで虹彩に小さな穴を開けるレーザー虹彩切開術や、房水を流出させやすくするために目詰まりを起こしている線維柱帯にレーザーを行うレーザー線維柱帯形成術などが行われます。
手術治療には濾過手術や房水流出路再建術などが行われます。

当クリニックでは緑内障手術は行いませんので、いずれも専門施設をご紹介させていただきます。

妊娠・出産・授乳時の緑内障治療

点眼薬とはいえ、体内に取り込まれる緑内障点眼薬は胎児への安全性が確立されているものはありません。
治療上の有益性が危険性を上回ると思われる場合にのみ使用します。
妊娠中には眼圧が下がることが多いため、点眼は中止することが多いですが、眼圧が上昇するようなら、個々の緑内障の進行度を考慮し、レーザー治療や手術が考慮されることもあります。
また、緑内障治療薬を使用している間は授乳を中止することとなっています。

文責 片桐真樹子 Katagiri Makiko M.D.,Ph.D

  • 日本眼科学会認定 眼科専門医
  • アイフレイルアドバイスドクター
  • 健康気象アドバイザー 日本頭痛学会

自らも片頭痛持ちである経験から頭痛診療を学び、頭痛と眼科疾患との関連を研究。2023年3つの診療科が協力して頭痛診療をするお茶の水頭痛めまいクリニック副院長就任。

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