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群発頭痛

群発頭痛は最も痛い一次性頭痛

脳そのものに疾患があったり、他の疾患が原因となって起こる二次頭痛と異なり、頭痛そのものが病気である頭痛を一次性頭痛と呼びます。
一時性頭痛の代表は「片頭痛」、「緊張型頭痛」、「群発頭痛」です。
このうち頻度は一番少ないものの、症状が一番重いと言われているのが群発頭痛です。

群発頭痛は頭痛の診療ガイドライン2021では三叉神経・自律神経性頭痛(trigeminal-autonomic cephalalgias:TACs)に分類されています。

群発頭痛の有病率

群発頭痛の有病率

群発頭痛の有病率は10万人あたり56~401人程度と報告されており、片頭痛に比べ、その患者数は100分の1程度と少ないと言われています。
しかし、約1000人に1人が群発頭痛を有することになりますので、それほど稀な疾患でもありません。

発症年齢は20歳代のことが多く、男女比は5~6.7:1で男性に多いと報告されています。
しかし近年、だんだんと男女比が小さくなっていることが報告されています。
生活習慣の変化や喫煙や飲酒との関連によるものと考えらます。

群発頭痛のメカニズム

群発頭痛のメカニズムは視床下部の体内時計のバグ

群発頭痛の患者さんでは、カーカディアンリズム(24時間周期の生体のリズム)に関連したメラトニンなどに変化が見られることにより、脳の視床下部に変化が起きていることが考えられます。
視床下部の体内時計のバグが、血管に達してしまい定期的に頭痛が起きてしまうと考えるとわかりやすいです。

また、群発頭痛の発作期には三叉神経血管系の活性化が起きていることが証明されています。
片頭痛の治療で使われる抗CGRP(シージーアールピー)抗体であるガルガネズマブが効くこともCGRPが関与していることを示しています。
片頭痛と大きく違うのは、群発頭痛は三叉神経領域の激しい痛みと共に、副交感神経が活性化されて、痛い方の側の目から涙が出たり、鼻水が出たりといった自律神経症状が起こることです。

群発頭痛の特徴と悪くしてしまう原因

群発頭痛はどのような特徴のある頭痛?

群発頭痛の特徴として

  • 春先や秋口などの季節の変わり目に起こることが多い
  • 1~2ヶ月の間、毎日のように、主に就寝後や明け方に激烈な痛みに襲われる
  • 片側の目の奥が激しく痛む
  • 燃えるような、突き刺されるような、えぐられるような痛み
  • 片頭痛はじっとしていたいような痛みなのに対し、群発頭痛はのたうち回る
  • 痛みの持続時間は15分~数時間
  • 群発期は年に1~2回のことが多い
  • 痛みと同じ側に涙が出る、目が充血する、鼻水が出る、鼻が詰まる、瞼がたれ下がる、腫れる、異常に汗をかく、などの症状が出ることがある。これらの症状のために、医療機関でも副鼻腔炎や急性緑内障発作と間違えられることがある

などが挙げられます。

群発頭痛は何で悪くなる頭痛?(群発頭痛の誘発因子・増悪因子)

一般的にストレスや筋肉の緊張などの身体的・精神的な原因によって引き起こされることが多いと言われています。

  • お酒:群発頭痛の方は、発作の期間にはほぼ例外なくアルコールで頭痛が誘発されます。
  • 喫煙:群発頭痛ではヘビースモーカーが多いと報告されています。
  • ニトログリセリン:狭心症の薬であるニトログリセリンは誘因になります。
  • シルデナフィル:バイアグラ??も群発頭痛を悪化させます。
  • ヒスタミン:アレルギー薬や胃潰瘍の薬が誘因になります。
  • 過度な運動
  • 体内時計の乱れ:群発頭痛には体内時計の関与が指摘されており、睡眠や活動と休息のリズムなどが乱れてしまうと、その情報が三叉神経に伝えられ、動脈が炎症を起こして拡張して頭痛が発生してしまいます。

群発頭痛の診断について

群発頭痛の診断基準

  • 片側のひどい痛みが目の奥、目の上、こめかみあたりのいずれか1ヶ所に15?180分間持続する
  • 以下の1項目以上を認める
    1. 頭痛と同じ側に
      • 目の充血または涙が出る(あるいはその両方)
      • 鼻づまりまたは鼻水(あるいはそのり両方)
      • 瞼の腫れ
      • 額または顔の汗
      • 黒目が縮瞳(茶目の中の穴の部分が小さくなる)する、または瞼がたれ下がる(あるいはその両方)
    2. 落ち着きのない、興奮した様子
      • 発作の頻度は2日に1回~1日に8回の間
      • 上記を満たす頭痛発作が5回以上ある。

群発頭痛の検査

治療にトリプタンを使用しますが、脳の動脈に狭窄がないことを確認してから使用するため、事前に頭部MRI検査などの画像検査が必要になります。
血液検査も行いますが、近年では帯状疱疹ウィルスの関与が示唆されており、必要があれば抗体価を測定します。
また、目の症状は急性緑内障発作と鑑別が必要になることがありますので、眼科受診が必要になることがあります。
当クリニックでは眼科を併設しており、すぐに眼圧検査が可能ですので、鑑別は容易です。

群発頭痛の治療について

痛みを和らげる治療?急性期治療

トリプタン

日本ではスマトリプタン(イミグラン®)3mg皮下注射(1日6mgまで)が保険適用であり推奨されます。
以前は受診しないと使用が困難でしたが、現在は自己注射のキットがあり、持ち運んで頭痛が出た時にご自身で投与することが可能です。

スマトリプタン点鼻も有効性が報告されていますが、日本では保険適用外です。

酸素吸入

高濃度酸素、6L/分の最長15分間の吸入などが推奨されます。
座ってやや前傾姿勢が良いです。在宅酸素療法は、当クリニックでご相談いただければ手配が可能です。
火気の取り扱いなどに十分注意が必要です。ご相談ください。

群発頭痛を起こさないようにする治療~予防治療

予防薬としては、ベラパミル(ワソラン®)を服用します。
ベラパミルは便秘になりやすいので、便秘薬を併用することが多いです。外来でご相談ください。
ステロイドの短期間服用は群発頭痛発作の早期終了に有効とされており、ベラパミルの効果が不十分の際に併用しますが、エビデンスは明らかではありません。

米国では片頭痛の治療で使われる抗CGRP(シージーアールピー)抗体であるガルガネズマブ(エムガルティ®)が使用されていますが、日本においては適用は片頭痛にのみであり、群発頭痛には保険適用がありません。ご相談ください。

群発頭痛の予防~非薬物療法

群発頭痛は激しい頭痛であり、予防療法が最優先されます。
生活上の注意としては「まず禁酒」です。
タバコも控えましょう。
季節の変わり目や、あわただしい年の瀬などは体調を崩しやすく、不摂生から体内時計の乱れをまねくと群発頭痛の発症へとつながります。
規則正しい生活を心がけましょう。

文責 片桐彰久 Katagiri Akihisa M.D.,Ph.D
脳神経外科専門医・指導医

日本頭痛学会・脳卒中学会・脳血管内治療学会・日本臨床高気圧酸素学会など 多くの学会の専門医・指導医を持つ。
妻と息子が片頭痛持ちであったことから頭痛診療を学び、板橋中央総合病院で頭痛外来を開設。片頭痛予防の抗CGRP製剤は区西北部医療圏で1番の使用経験を持つ。2023年に3つの診療科が協力して頭痛診療をするお茶の水頭痛めまいクリニックを開設。

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